ZOKEI賞選抜作品展

映画専攻領域

福島 大我

《EYES》

2021年

僕たちは自分の眼でしか物事を見られない。

あの時、あの人は何を見て、何を考えていたのだろう。

眼を瞑り、あの人の世界を想像しても、その眼差しにはなれず慢心した自分の世界に入ってしまう。カメラのファインダーから覗き、あの人を捉え、写す事はできるのだろうか。 保身と偽装から逃れ、あの人を見つめる事で、初めて他者と共に在る時間が始まる。

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教員評価

准教授

高橋 直治

自分の体験を映画にすることは容易なことではない。誰もが自分の言い分に拘泥し、気がつけば自分ばかりを擁護し美化してしまう。自己肯定と自己承認を求めるばかりの映画は、はたして他者の心に届かない。しかし、時たま、ほんの時たま、自分の体験を他者の側から見つめ直してしまう作品が現れる。あの時、あなたは私のことをどのような眼差しで見つめていたのだろうか? 視線の捏造に耐え、安易な言語化を戒めながら、到達不可能な〈あなた〉の眼差しを朴訥に辿り直そうとする時、映画は、路上で粉砕してしまった撮影機を置き去りにして、〈あなた〉の前に素手で立ち尽くす。その時、不意に、映画=愛が誕生する