絵画専攻領域
菊野 祥希
《Silent waves》
2021年
筆跡やストロークといった、描くための行為は一回性-唯一無二のものであり同一のものは存在しない。しかし版の技法を通すことで、それらは複数性-連続性を得るのである。
そこから生じる行為の痕跡の一回性と版を通じた連続性の関係について、筆跡などの行為の本来持ちうる物質感や版による再構成を手がかりとしながら制作を行っている。
教員評価
教授
生嶋 順理
スクリーンプリントは、スキージングによる1回の工程で版から支持体へ、その形を均質な物質面として置き換え移す。そこには型と行為から生まれる劇的な物質の生成がある。菊野は、身体的な描く行為から時間と物質性を取り去り、その痕跡となった形を版として用いる。描くことの情動と冷静を調和させることが菊野の表現の目的にあり、スクリーンプリントの技法で制作することが。極めて重要な手法となっている所以である。支持体層には、気が付かない程の階調で連続する幾何模様が刷り込まれている。現代は、人間の関係性が作り上げたパターンの中に生活があるかの様に思えるが、その中に自身の生を意識しどう在るべきなのか模索する意思を表現した作品である。