ZOKEI賞選抜作品展

グラフィックデザイン専攻領域

小泉 勁介

《好晴ここち畫圖》

2021年

僕は日本に限らず、昔の文化やそこに存在していたものに惹かれます。レトロと言われるようなものから数千年前のものまで。文字・建物・道具・装飾品・動物などあらゆるものに魅力を感じ、魅入ってしまうことが多々あります。そうしている時は、なんだか心地好く、晴々した気分になります。

調べもので図書館にいき、調べることに飽きて無意識に好きそうな本を片っ端から見ていたとき「和菓子見本帳」という昔の、和菓子のカタログ本と出会いました。形に色、筆のタッチや横に添えられた文字に至るまで、とにかく完成度が高くしばらく見ていました。そして、やはり心地が好かった。

日常に中にも、瞬間的にふと感じる。だけど妙に心に残る実体として視認することのできない空気感や気分があります。幸せと言うほど大層なものではないけれど、終わって欲しくないと思うような瞬間。

それを、まず言葉に起こし、ドローイング。その中からちょうど良く面白そうな28の感覚を決め、色や形、使用する画材、タッチを検証し自分の感じている感覚と一致する抽象表現を模索しました。それを元に職人へ依頼し和菓子を製作もらいました。本来、「季節を味覚でも感じてもらうため味や色味を考える」和菓子に対し、個人的な感情を和菓子にし、「見た目が美味しそうということより、ドローイングを再現する」アンチ的なアプローチの中、素材・色・形をより理想に近づけるため、何度かの試作を重ね完成させました。

僕が、昔のものを見ている時や、日常の些細な瞬間に感じる感覚。それぞれがどんな瞬間なのか。共感するのか、自分は他のことにその感覚を抱くのか。様々な想像をして振り返りながら見てもらえたらと思います。

コンタクト

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教員評価

教授

長井 健太郎

自分が瞬間的にふと感じる気分を言語化し、ドローイングを行い、それを元に実際に和菓子を制作した。単に美味しそうな、季節に応じた素材や色の和菓子を提案するのではなく、自分の気分を和菓子にしてしまおうという、ある意味では非常識で型破りな発想が良い。職人に依頼して制作した和菓子は、美しいものから不味そうなものまで、また固い形から柔らかい形まで、繊細なディテールや色彩を含めそれぞれが独特の個性を持っており、どのような瞬間や気分なのか、その心象や雰囲気を鑑賞者に想像させる。左右に配置された見本帳の造本設計や空間の見せ方も工夫されており、展示として総合的に高く評価された。