About
人間にとっての色彩は、一義的には視覚的に体感する現象です。「見る」という言葉と「知る」という言葉はいくつかの言語においても連続性、相互作用性を包する一方で、森羅万象の理を解明する行為はExperimetal Philosophy、あるいはNatural Philosophyという言葉が担っていたと言われています。
この展覧会は、21世紀の芸術家による表現と、20世紀中期に東京藝術大学、女子美術大学で開講、実践された色彩学教育(指導教員:上原之節、小町谷朝生)の記録(注1)で構成されます。東京藝術大学で漆工を学んだ小町谷朝生は観察色彩学を提唱し、表現実験による体験から色彩観を磨く姿勢を促しました。
現代の表現者たちは、色材、可視域、混色、知覚、クロスモーダルなど基礎的(Fundamental)なコードから見ることへの問いを照り返す科学と美学の迷宮へと鑑賞者をいざないます。
これらの表現を俯瞰する空間に佇み、芸術家の色彩観を育む色彩学のありように思いを馳せていただく機会となれば幸いです。
注1:このうち現存する推定約3000点について、東京造形大学教育研究助成金(2016-2019年)を受けて、粟野由美(東京造形大学教授)管理のもと、整理が進んでいます。
Artist
《void #127》2022年
菊池 遼 / KIKUCHI Ryo
1991年、青森県生まれ。博士(造形)。鑑賞する距離に応じて作品の見え方が変わる視覚効果を用いて、「もの」の儚さやたどり着けなさ、現象性の表現を試みる〈void〉シリーズなどを制作。 主な展示に、「2022年度東京造形大学博士審査展」東京造形大学附属美術館(東京、2022)、「can (not) reach」EUKARYOTE(東京、2022)、「appropriate distance」銀座 蔦屋書店アートウォールギャラリー(東京、2020)
《泡沫の形》 2019年~
中山晃子 / NAKAYAMA Akiko
画家。色彩と流動の持つエネルギーを用い、様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる。絶えず変容していく「Alive Painting」、その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる「Still Life」など、パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。様々なメディウムが渾然となり、生き生きと変化していく作品は、即興的な詩のようでもある。鑑賞者はこの詩的な風景に、自己や生物、自然などを投影させながら導かれ入り込んでいく。 Ars Electronica Fes(リンツ)、MUTEK モントリオール等。http://akiko.co.jp
《2D Painting[2022001]》2022年
ヨフ / YOF
大原崇嘉、古澤龍、柳川智之の3人によるアーティスト・コレクティブ。 視覚メディアにおける色彩・空間などのプラグマティックなリサーチから、視覚表現の現在性を捉え直す実践を行う。 主な展覧会に、OPEN SITE 2019-2020「2D Painting」トーキョーアーツアンドスペース 本郷(東京、2019)「Paraillusuion」art space kimura ASK?(東京、2022)、「流れる窓、追い越す目」art space kimura ASK?(東京、2023)など。
《実在/現象》2020年
撮影:木村 直
片桐旭/ KATAGIRI Asahi
光や色彩への関心から「世界の在り方(実在) / 見え方(現象)」を問うて絵画作品を制作してきた。本作品群は、紫外線を照射する事で絵具に含まれる蛍光顔料が発光し、図像を認識できる。そこから放たれる光は絵画の物理的な構造から分離し、分質性が排除されたメディウムへと昇華する。私の作品において、その光は「真実の世界」の暗示として機能する。
この考え方はイデア論に端を発している。視覚的なメカニズムによって我々が知覚・体験するこの世界は実在から乖離しているのではないだろうか。そのイデア界とでも言うべき「真実の世界」と「現実世界」を辛うじて繋ぐ窓のような存在として絵画は成立するのではないかと考える。
《瑞兆》2023年
ミルクラ / milcra
ミルとクラクラ・知覚のゆらぎ遊び:体験する科学の遊び場をつくるArtist Collective.
Event
”Alive Painting”
日時:2023年6月24日(土) 18:15-18:45
会場:東京造形大学12号館1階 ZOKEIギャラリー
アーティスト:中山晃子(画家)
事前申込不要・参加費無料
参加ご希望の方は上記の日時に会場にお越しください。
Gallery
実際の展示の様子です。
撮影:斎藤晃恵
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Movie
本展のサイネージ映像です。
本展の動くポスターです。
グラフィックデザイン:宮前陽(KASUGAMARU)
モーションロゴ:SHANG YINGQI(メディアデザイン専攻領域)
映像編集:山川夏(メディアデザイン専攻領域)
Information
「いろとこころ ~科学と美学が出会う色彩学のありか~」
2023年6月1日(木)-7月4日(火)
Access
東京造形大学附属美術館
〒192-0992 東京都八王子市宇津貫町1556〈東京造形大学構内〉
TEL:042-637-8111
https://www.zokei.ac.jp/museum/
JR横浜線相原駅 東口よりスクールバス5分・徒歩15分
※当館には専用駐車場がありませんので、公共交通機関をご利用ください。
本展は感染症予防のための十全な措置を講じて実施いたします。最新の情報は当館ホームページをご確認ください。