対象物はその内面に関するわたしたちの知識を通じて、その現象以上のものにひろがる。
つまり、物は、その外面が認めさせる以上のものであるということを知ればいい。
——パウル・クレー『造形思考 上』(土方定一・菊盛英夫・坂崎乙郎 共訳、1973年、新潮社)


 東京造形大学は、1966年に開学してから50年以上に渡り、多くのデザイナーやアーティストを輩出してきました。そうしたなかで、東京造形大学附属美術館では、これまで、卒業生の活躍を紹介する展覧会として「造形現代芸術家展」(2005-2014年)や「CSP(Creative Spiral Project)」(2017-2019年、2013-2015年は桑沢デザイン研究所を会場とする)を開催してきています。そして、このたび、新たなシリーズとして「造形思考」をスタートさせます。東京造形大学の10専攻領域の内、2つの領域の卒業生の仕事を取り上げるもので、第1回目となる本展では、写真専攻領域を卒業した3名と絵画専攻領域を卒業した3名が参加をします。


 今回のテーマは「現在の手ざわり」。「手ざわり」とは、美術表現においては、〈確実さ〉を保証するものと考えられてきました。しかしながら、現在、私たちはそうした〈確実さ〉を手にすることができるのか、そのこと自体が疑わしくなっています。その上で、出品者たちは各々が定めた出発点から、各々が選んだ方法によって、各々が立つ場所を掘り下げようとしています。そうした試みが最終的に〈確実さ〉に到達するか否かではなく、そのように試みることが彼ら/彼女らの生にリアルという感覚をもたらしているといえます。


 現在においては、展覧会そのものが「時代遅れのメディア」と呼べるのかもしれません。そのことは「手ざわり」という言葉が〈確実さ〉を保証するとは限らなくなったことと無関係ではないはずです。そうした現在の状況の中で、6名の出品者と一緒に「手ざわり」について改めて考えてみたいと思います。

2023年10月
東京造形大学附属美術館

The object grows beyond its appearance through our knowledge of its inner being, through the knowledge that the thing is more than its outward aspect suggests. Man dissects the thing and visualises its inside with the help of plane sections; ….

- Paul Klee, Paul Klee: the thinking eye, translated by Ralph Manheim from the German edition, `Das Bildnerische Denken‘ (Benno Schwabe & Co., Basle 1956) 1964, Percy Lund, Humphries & Co. Ltd.


  Since 1966、Tokyo Zokei University has produced many designers and artists over the 50 years. In this context, the Tokyo Zokei University Museum of Art has held “Zokei Contemporary Artists Show” (2005-2014) and “Creative Spiral Project (CSP)” (2017-2019, at Kuwasawa Design School in 2013-2015) as exhibitions showcasing the practices of its graduates. (2013-2015, at Kuwasawa Design Institute). In this occasion, we are launching a new series, “Creative Thinking”. The first exhibition will feature the work of graduates from two of Tokyo Zokei University's ten majors: three graduates from the photography major and three graduates from the painting major.


  The theme of this year's exhibition is ‛Modern Touch'. In art expression, "touch" has been regarded something that guarantees ‛certainty’. However, it is now doubtful whether we can obtain such ‛certainty’. The exhibitors are attempting to seek the place where they stand, from their own starting points they have set for themselves, using the methods they have chosen. It is not a question of whether these attempts will eventually reach ‛certainty', but rather such attempts will bring a sense of realities to their lives.


  Today, the exhibition itself could be called as an 'outdated medium'. This is not unrelated to the fact that the term ‛touch' no longer guarantees certainty. In this current context, we would like to rethink the ‛touch' together with the six artists.

Tokyo Zokei University Art Museum
October 2023



第1回アーティストトーク

日時:10月9日(月・祝)17:00-18:40
会場:東京造形大学4号館4E教室
進行:末永史尚(東京造形大学教授)
アーティスト:香月恵介 千原真実 ナガタダイスケ


第2回アーティストトーク

日時:11月3日(金・祝)17:00-18:40
会場:東京造形大学4号館4D教室
進行:首藤幹夫(東京造形大学教授)
アーティスト:木村直 小山渉 橋立梨乃


事前申込不要・参加費無料
参加希望の方は上記の日時に会場にお集まりください。


実際の展示の様子です。



造形思考1-現在の手ざわり-

Creative Thinking 1: A Modern Touch

東京造形大学附属美術館

2023年10月9日(月)~11月25日(土)
開館時間:10:00-16:30 (入館は16:00まで)
休館日:日曜、10月10日(火)、10月17日(火)、11月1日(水)
※ただし10月15日(日)は開館
入館無料


主催:東京造形大学附属美術館
翻訳:星野美代子
デザイン:Company2


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東京造形大学附属美術館

〒192-0992 東京都八王子市宇津貫町1556〈東京造形大学構内〉
TEL:042-637-8111
https://www.zokei.ac.jp/museum/

JR横浜線相原駅 東口よりスクールバス5分・徒歩15分
※当館には専用駐車場がありませんので、公共交通機関をご利用ください。

本展は感染症予防のための十全な措置を講じて実施いたします。最新の情報は当館ホームページをご確認ください。