東京造形大学附属美術館では2020年に退職を迎えた髙橋淑人の展覧会を開催いたします。髙橋淑人は1996年より東京造形大学助教授、2002年より教授として長年にわたり絵画専攻領域で教鞭をとり後進の育成に携わるとともに、自身の制作・研究に国内外で精力的に取り組んできました。和紙と版を使った制作を経て、現在の和紙を支持体として絵具を重ねていく技法に移行後も、一貫して「描く」ということを追求してきました。本展は多くのアーティストを生み出した優れた教育者であり、思考し続ける表現者でもある髙橋の近作を中心とした、活動の軌跡を紹介する展覧会です。
東京造形大学附属美術館
髙橋淑人退職記念展 「JOY」に寄せて
人間の目は波長にして380〜780ナノメートルまでの光を見ることができる。その波長に沿って色彩を並べると、青から黄、そして赤の世界へと変化していく。これまでの髙橋の作品制作過程を眺めると、まさにこの青から赤への波長の振幅を辿るように色彩が変化してきている。
一連の作品を眺めていくと、いつの間にか覚醒作用が湧き起こり、過去の光の記憶が残像のように甦ってくる。人間の誕生は闇から光の世界へ投げ出され、臨終の際には強烈な光の中に昇天していくと言われている。作品には、人間の光の記憶を喚起させるマジナイのようなエナジーが渦巻いている。絵の中の光は、100年前、1000年前、10000年後も変わらず色彩の地層となって蠢き続け、網膜を通過した後でニュートリノのように体内貫通をして、見えない波動を残していく。絵を見た後で目を閉じると、残像のような記憶の光がいつまでも輝き続けるのである。さらに髙橋の作品では、可視化できない紫外線や赤外線までもが、存在と不在の境界域を自在に行き来しているようで、いつしか無重力の宇宙遊泳に誘い出されてしまう。
作品には太古からの光の原風景が、いつまでも消えることなく存在し続けている。色彩という光を集積し同時に拡散させることで、長年に渡るシリーズは、宇宙存在の光の波動をDNA絵画のように創出してしまったのである。
中里和人(写真家・東京造形大学教授)
会期 | 2021年10月25日(月)~11月27日(土) |
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開館時間 | 10:00-16:30(入館は16:00まで) |
休館 | 日曜・祝日・10月29日(金) ただし11月23日(火・祝)は開館 |
入館無料
本展は一般のお客様もご入館いただけます。
★大学入構の際は大学入口での検温をお願いいたします。
★受付にて「美術館」にいくことを守衛にお伝えください。